なぜなにしぇいむ☆おん 第二十七回

 ==================
  なぜなに《しぇいむ☆おん》その27 
        祭りのあと      
 ==================



 「ふっふーん。こんにちわ〜♪」 

 「いらっしゃいませ……」 

 「ってあれ? どうしたの? 元気ないわね」 

 「あ、すいません。先日店長が臨時店舗を借りて、
  そこで夜間営業をやってたんですけど、
  思ってた以上にお客さんが多くて」 

 「ふうん。大変だったみたいね」 

 「大変なんてもんじゃありませんよ!」 

 「21時頃だって言ってるのに、ちょっと開店が遅れただけで、
  まだかまだかとお客さんは騒ぐし、注文は多すぎるし、
  企画立案者のライターはバックレるし……」 




  ――以降20分ほど早苗の愚痴が続く。


 

 「なるほどねぇ。
  それで店長と早苗ちゃん以外は誰も居ないのね」 

 「ボクもいるよー!」 

 「あら典乃ちゃん。いつも元気ね〜」 

 「うん。それだけがとりえだねってよくほめられるよ!」 

 「それって前にも聞いたことがあるような気がするけど。
  まあ典乃ちゃんが気にしてないならいいか」 

 「ほえ?」 

 「遠まわしにバカにされてるってことよ」 

 「ええー! そうだったんですかー!」 

 「あら早苗ちゃん。ずばり言っちゃうんだ」 

 「だって遠回しに言っても、
  典乃ちゃんって理解してくれないから」 

 「確かにそうかもね」 

 「え? なに? どーゆーこと?」 

 「今日は疲れているからまた今度ね」 

 「典乃ちゃんはまあいいとして、早苗ちゃんがこの状態だから、
  里美ちゃんや他のバイトの子に至っては……」 

 「みゆみゆは今日シフトじゃないよー。
  でも可奈さんはなんかアタマがいたいーって言ってたよ」 

 「二日酔いね。お客さんに勧められるまま飲んでたからね」 

 「接客中に飲んでもいいの?」 

 「風営法には違反してると思います」 

 「いいの?」 

 「よくはないけど、一日限りの臨時店舗だから」 

 「ボクは飲んでないよー」 

 「未成年だから当然でしょ。飲んだらそれこそ警察に捕まるわよ」 

 「エエー! ボクローヤにいれられちゃうの?」 

 「そうよ。刑務所に入って灰色の青春を送ることになるわよ〜」 

 「そんなのいやだよー」 

 「飲んでないから平気でしょ」 

 「あ、そうか!
  でっでも! 可奈さんはどうなるの? つかまるの?」 

 「そうね。残念だけど禁固三年は硬いわね。
  そろそろ警察が向かっているころだと思うわ」 

 「そそそ、そんなー」 

 「藤本さん! 余り典乃ちゃんをからかわないで下さい」 

 「あはは、ごめーん。冗談よ典乃ちゃん。
  可奈さんだっけ? 彼女は捕まったりしないわよ」 

 「よかったぁ」 

 「ところで早苗ちゃん。可奈さんっていうのが金髪の子?」 

 「あ、はい。そうですけど。可奈さんが何か?
  ちなみに黒髪に赤いリボンの子が美幸ちゃんです」 

 「あ、いや。私はただのお客さんだから。
  その可奈さんとか美幸ちゃんとか言われても分からないのよ」 

 「ええ? トーコさんって可奈さんとはなしたことないんですか?」 

 「オーダーをとってもらったことはあるけど、
  別にこれといって話したりはしないわよ。
  まあ興味はあるけど」 

 「じゃあ今度ボクといっしょにシフトに入ったときに
  可奈さんをつれてきますね」 

 「ありがと」 

 「みゆみゆはどうしよう?」 

 「みゆみゆっていうのが美幸ちゃん?」 

 「うん。そーだよ!」 

 「そうね。良かったら紹介してくれるかしら?」 

 「ほんとーですか! ワーイ!」 



     ブーーーーーーーーーーーーーーン!!



 「あらら、行っちゃった」 

 「本当に元気が良くて素直で……。
  いいですか藤本さん。
  典乃ちゃんに変なことを教えちゃダメですよ」 

 「そんなことするわけないじゃない。信用無いのね。
  少なくとも紫さんよりはマシだと思うけど」 

 「ムラサキさん? 誰ですか?」 

 「ホラ、髪の毛が紫で、“年○”とか“オバ○ン”とか言うと
  刃物持って追いかけてくる人のことよ」 

 「刃物はないと思いますけど、
  志津江さんのことだというのは分かりました」 

 「で、今日は紫さんは来てないの?」 

 「なんでも拳が痛いって。
  先日の臨時店舗でそのNGワードを連発するお客さんに
  鉄拳制裁を加えていたから」 

 「そ、そんなことして大丈夫なの?」 

 「うーん。多分大丈夫かな。
  ほら、プロレスの猪木師匠のビンタみたいなもの?
  多分そんな感じだと思います」 

 「なるほどねぇ。そういう早苗ちゃんはどうなのよ?
  やっぱり誰かぶん殴ったの?」 

 「そんないつも誰かを殴っているような言い方は
  やめてください!」 

 「違うの?」 

 「違います。そんな頻繁には……。
  たまーに、うん。ちょっとだけ……」 

 「まあいいか。
  余り言及すると早苗ちゃんが困っちゃうみたいだからやめとくわ。
  私の相手は当面のところ紫さんだけだから安心して」 

 「安心してって、まだやってたんですか?」 

 「あの人をギャフンと言わせるまではやめないわよ」 

 「あの、いまどき“ギャフン”はないと思いますよ?
  歳がバレちゃいますよ?」 

 「なにを言ってるのかな早苗ちゃんったら!
  四捨五入したら20歳の私をつかまえて歳がバレるとか……。
  ねえ。いくら温厚な私でも怒るわよ?」 

 「す、すいません!」 

 「そう♪ わかってくれて嬉しいわ。
  それじゃ随分長話しちゃったけど、
  メニュー貰えるかしら?」 

 「あ、はい。それは構いませんけど、時間大丈夫ですか?」 

 「時間? えっ! ちょっと待ってよ!
  もうこんな時間なの? ご飯食べる時間ないじゃない。
  ねえ早苗ちゃん。なにかテイクアウトできるものある?」 

 「あったと思いますけど。ちょっと待ってて下さいね」 





     ジャーーーーーーーーーーン!!

 「ハッハッハッハ! 久しぶりですねー。藤本くん」 

 「あら店長。私のことは桃子って呼んで欲しいな?」 

 「藤本くんがバイトしてくれるなら考えましょう」 

 「どういう基準なんですか?」 

 「んん〜〜! つまりだね。
  バイトの子には親しみを込めて名前で呼ぶんですよー。
  藤本くんはお客さんだからねー。ちょっとできないんですよ」 

 「なるほど。そういうわけでしたか。
  バイトやりたいけど、看護師って死ぬほど忙しいのよねぇ」 



 「仕事忙しい人がこんなところでのんびりしてていいんですか?」 

 「のんびりなんかしてないわよ。結構あせってるのよ」 

 「これ、サンドイッチです。
  食べやすいように四分割してあります」 

 「ありがとー! 早苗ちゃん。愛してる!」 

 「はっはっは、同性愛ですか。
  いいですねぇ。私も恋愛成就するよう頑張りますよー!」 

 「あら、私が一番好きなのは店長よ」 

 「なんと! 藤本くんはバイセクシャルでしたか。
  なかなか侮れませんねー」 

 「うふふ。じゃあ今度隆也くんと三人で……」 

 「いいですねー!」 

 「よくないわよ!
  藤本さんも冗談ばかり言ってないで、
  早く病院に帰ってください!」 

 「あらあら、怒らせちゃった。ゴメンね。
  それじゃ早苗ちゃんに店長、バイバーイ♪」 

 「アディオス!」 

 「ありがとうございましたー」 



     まあなんだかんだで30分くらい経過……



 「あ〜疲れた」 

 「あれ? トーコさんは?」 

 「とっくに帰ったわよ。
  典乃ちゃんこそ、いままで何処に行ってたの?」 

 「んっとねー。
  みゆみゆのおうちと、可奈さんのマンションだよー」 

 「美幸ちゃんと可奈さんの家って、なんで?」 

 「えー! だってトーコさんをショーカイするから、
  れんらくしとこうと思ったんだよ」 

 「いや、それはいいんだけど、どうしてわざわざ家まで行くの?
  電話があるでしょ電話が!」 

 「お店のでんわはかってにつかっちゃいけないのかなって」 

 「確かに私用電話は困るけど、少しくらいならいいわよ」 

 「ありがとうございまーす。
  でもね。ボクって話すのヘタだから、
  ちょくせつあって話さないとうまく伝えられなくて」 

 「なるほど。確かにそうかもね。
  とこでどうやって可奈さんたちと藤本さんを引き合わせるの?」 

 「ほえ? みゆみゆと可奈さんのシフトをきいてきたから
  トーコさんが……」 

 「偶然来るのを待つの?
  そのシフトを藤本さんに教えないとダメなんじゃない?」 

 「そそそ、そうかー! どうしよう早苗さん!」 

 「可奈さんたちのシフトはアタシから藤本さんに伝えとくわ。
  それでいいかしら?」 

 「たすかります。ありがとうございます」 

 「それじゃアタシはしらばく休憩してるから、
  なにかあったら呼んでね」 

 「はーい。ホールはまかされましたー!」 

 「なんでこんなに元気なんだろ?
  核融合エンジンでも積んでるのかしら?」 







 「ブーーン! いらっしゃいませー!」 



 ==================
  なぜなに《しぇいむ☆おん》その27 
        祭りのあと      
         END       
 ==================

なぜなにしぇいむ☆おん第二十七回 おわり